ヒューゴは工場で働きながら、そこで拾った部品やガラクタでおもちゃを作るのが大好きな15歳の少年だ。両親に「お前はきっと世界一のおもちゃ職人になれる」と応援されてとても愛されて育った彼は、少し不思議な力を持っていた。

ヒューゴの家は貧乏だった。工場でガラクタを拾っているのはおもちゃを作るための材料を買うことすらできないからだ。そのうえどんどん税が重くなっていき、両親を苦しめる。ヒューゴは何もしてやれない自分に苛立ち、悔しさを感じていた。

毎日のように役人が訪れては更なる増税を言い渡す。そのうち今の稼ぎだけではとても生活できない額になっていった。いつしかヒューゴも自分の仕事を増やして、休む暇も、大好きなおもちゃ作りに取り組む時間もなく、ただがむしゃらに働いていた。

おもちゃ作りをする様子もなく働き続けるヒューゴを両親は心配していた。「僕がおもちゃ作りを好きなのは、父さんと母さんが喜んでくれるから。今は家族が笑顔で暮らしていくために頑張るんだ」答えるヒューゴに両親の心配は深まるばかりだった。

日曜の朝市には母の畑で採れた野菜を卸しに行く。父の取引を待つ間、ヒューゴは広場でおもちゃを取り出した。 「親愛なるお友達、僕の息で君は目を覚ます。」 おもちゃはまるで生きているかのように勝手に動き出し、しばらくして静かになった。

「いったいどうやって動かしたんだ？それによくできたおもちゃだ。」気がつくとそばに商人が立っていた。「ひとつ、譲ってくれないか？」 ヒューゴが黙っていると、商人は微笑んで「またここに来るよ」とチップだけを渡して去って行った。

様子を見ていた住人達もヒューゴのおもちゃを見て興味を持ちはじめた。「君が作ったのかい？」「なんて精巧なおもちゃだ！」「こんなの初めてみた！」人々の笑顔を見ているとヒューゴ自身も嬉しくなった。確かな自信が湧いてくるのがわかった。

家に帰るやいなや作業机にかじりつくヒューゴ。夢中になっておもちゃを作り始めた。いつのまにか朝になり、寝ることも忘れ没頭する日々が続く。子供も大人も楽しめるおもちゃを産み出したい。ヒューゴの原動力は「人々の笑顔」だった。

次の朝市におもちゃを持って広場に行くと、あの商人が待っていた。「君のおもちゃは本当に素晴らしい。僕の子供たちにプレゼントしたい。譲ってくれないか」商人は金貨を差し出した。それは、おもちゃ職人として受け取る初めての対価だった。

家に帰ると役人が母親に詰め寄っているところだった。「そう慌てないでください。お金ならここにあります」ヒューゴは商人から貰った金貨を誇らしげに役人に差し出した。そこにいた全員が驚き、受け取った役人は呆気にとられたまま帰っていった。

しかし次の徴税の日にさらに高い金銭を要求される。商人から貰ったお金はもうなくなってしまっていた。疲弊する両親にヒューゴは焦り始める。そこであることを思いつく。「永久に動くおもちゃがあれば高値で引き取ってくれる人が現れるのでは…」

ヒューゴは永久に動くおもちゃについて研究を始める。まずは絶対に壊れないおもちゃを作るために傷や破損が出来にくく熱に強い素材を探しはじめた。貧しいヒューゴには高価な素材は手が届かない。朝市の日に広場でおもちゃを売ってお金を集めた。